氏 名
 西ヶ谷 勝也
 所 属
東燃清水OB会
 掲 載 日
平成28年12月16日
表 題

 ジャンボ干支“酉”と古民家

本   文 


 過日、地方紙に「巨大な干支、今年も登場」という記事を見つけた家人に誘われ早速見学に馳せ参じた場所は、島田市大代の県道81号沿い、国1藤枝バイパスを大代ICで降り大井川右岸を北上、すぐに左折して県道81号を約5キロ入った静かな山里、道路わきの広場だ。

 “酉”は地元の有志が10日間かけて作った「ニワトリの夫婦」と「2羽のひよこ」。間伐材や竹で作った骨組みにニワトリは軽トラ3台の稲ワラを、ひよこは生の杉の葉を、厚く丁寧に張り合わせた傑作で、鮮やかに赤く塗られた雄鶏のトサカが初冬の青空に映えて見事であった。雄の“酉”は高さ3.6メートル、幅6メートルと巨大で迫力ある作品だ。ジャンボ干支の作成は当地の年末恒例で県内外から多くの見物客が訪れ、歴代ジャンボ干支を掲載したカレンダーの販売や、夜間のライトアップ等があり来年2月末まで展示される。

 ジャンボ干支の鎮座する広場の奥に重要文化財“大代の御林守・河村家住宅”があると聞き足を伸ばす。大代の名主・河村家は「御林(おはやし)」と呼ばれた江戸幕府直轄の山の役人「御林守(おはやしもり)」として大代の山々を管理していた名家で、住宅には「御林守」としての役目と当地の歴史を語る貴重な品々が数多く残されている。

 河村家住宅は寛政5年(1973年)築で、広い土間や潜り戸、武者張り天井など江戸時代の武家の暮らしを色濃く伝えている。しかし築200年を越す茅葺き屋根の傷みは激しく、現在は写真のように屋根全面をトタン板で覆い保護しており、併設する物置は瓦屋根が崩れ落ち傷みが激しい。現在の当主が丁寧に案内してくれたが、維持管理には特に金銭的な負担が重く、茅葺き屋根の葺き替えには億以上の金が掛かる為困難である事。また、後継者がなく自分の代で住宅の保存は終わりになってしまうかもしれない事などを寂しそうに話されていたことが印象的であった。

 貴重な文化財や価値のある歴史遺産は各地に数多くあるが、特に個人所有のものの維持管理や、保存の難しさを改めて実感したひと時だった。

写真―1 ジャンボ干支“酉”
写真―2 大代御林守“河村家住宅”
写真―3 河村家住宅を囲う“苔むす基礎石垣積み”

以上 

       
 
写真―1
 
写真―2
 
写真―3
 
             
写真をクリックすると拡大写真が見られます