氏 名
豊田 乾
 所 属
東燃本社OB会
 掲 載 日
平成23年08月10日
表 題
 短歌便り-21 (東日本大震災-2)
本   文 


 飢えつつも飼い主求め傍らに寄り添い去らぬ犬のありしと

 放置され飢えたる牛は餌を ( ) りて眸に泪ため飼い主を呼ぶ

 津波去り亡き子を弔う鯉のぼり廃墟の空に雄々しく泳ぐ

 子に代わり証書受け取る父の目は涙に潤み歯を食いしばる

 人間の驕りを咎める天罰かバベルの塔のごと原発崩る

 イヤホーンを妻と分ちて共に聴く懐かしき唄停電の夜(計画停電)

 放射能の危機未だ去らざりし見えぬ毒降り秋風の吹く

 大震災から半年も経つが被災地の復興は遅々として進まず、空や大地には放射能と言う目に見えぬ毒を含むセシュウムが漂っている。

 被災地の様子は連日テレビで放映されている。被災者の苦しみ悲しみは言うまでもないが、人間と共に暮らしていた犬や猫、家畜などの苦しみも大きく、放映された姿にはいくたびも涙を誘われた。

 汚染された牛舎の牛は痩せ衰えて、餌を求め、飼い主を捜し呼ぶが、その大きな眼には涙が一杯に溢れている。津波で流された飼い主の遺体を探し、その傍らに飢えながら十数日も留まり、去らなかった健気な犬もいた。

 核の世界は神の領域で人間の侵入を許さぬ場なのであろうか。原発の安全性をさらに向上させ、神の領域に再挑戦し、不足しているエネルギーの供給を計るべきなのであろうか。世界中の国が直面し、未だ回答を得られぬ難問である。        以 上

                         
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