氏 名
石田 正志
 所 属
東燃関東地区OB会
 掲 載 日
平成23年03月17日
表 題

 大地震の夜

本   文 


 平成23年3月11日(金)午後2時46分、国内最大の東北地方太平洋沖地震が発生、東京下町の我が家もこれまで体験したことの無いような大きな揺れに見舞われた。2階では食器棚のグラス、果物入れなどが落下破損、3階では可動式の本棚の一部が倒壊し、文庫本が床に散乱、テレビや観賞用の植木鉢も床に落下し土を撒き散らし足の踏み場もない。地震により都市ガスのガスメーターも作動しガスが停止した。余震の続く中、マスコミの地震情報を見ながら、妻と二人何とか後片付けを済ませるうちに日没を迎えた。

 マスコミによるとJR、私鉄、地下鉄などすべての公共交通機関が終日運転を見合わせているとの情報。大都会・東京で前代未聞のことだ。都心から自宅に帰るサラリーマンの足が完全に奪われ、帰宅時の大混雑が予想された。

 野次馬根性から町に出てみて驚いた、裏通りとも言うべき近所の道路まで車が数珠繋ぎで渋滞している。更に近くの都心と下町、浦安方面を結ぶ幹線道路である葛西橋通りや永代通りに行ってみると、普段は歩行者がまばらな歩道に、あふれ返るほどのサラリーマンの人の波。横断歩道は人の波で溢れ、左折待ちの車もわずかに1~2台が曲がれるのみ。車道は上下線とも車で大渋滞。1回の信号待ちでわずか2~3台が前に進むのみ。

 「渋谷から新橋まで都バスで2時間かかった。新橋からここまで歩いて1時間、これから北砂まで帰ります。心配する娘とやっと連絡が取れました」との60歳がらみの老人。「新宿から3時間かけて歩いてきました、葛西まであと2時間かけて行く予定です。部屋の中がどうなっているか心配です」との独身の若い男性。「三つ目通りはどこですか?」地図を見ながらたずねてくる若い女性。「辰巳に行くにはこの道で良いのでしょうか?」とのインド人夫婦。街道筋のコンビは商売繁盛、弁当、食料品の棚は空っぽになっていた。

 長距離通勤のサラリーマンはハナから帰宅を諦め、会社などで夜を過ごした方も多い、飲み屋は満員であったようだ。結果としては翌日には交通機関も開通し、ようやく帰宅できたようだ。いずれにせよ、多くのサラリーマンにとって、それぞれのドラマを経験した大震災の夜であった。
 

帰宅を急ぐサラリーマンの人波
渋滞で動かない満員の都バス
上下線とも大渋滞の永代橋通り
空っぽの弁当棚
満員の飲み屋
繁盛するコンビニ

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