氏 名
森  規
 所 属
東燃和歌山OB会
 掲 載 日
平成21年6月01日
表 題

沖縄県民斯ク戦ヘリ

本   文 

 
 大田實司令官が玉砕に近い昭和20年6月6日夜、沖縄県民の献身的作戦協力について、海軍次官に宛てた電報。(第062016番電)左ノ電ヲ■■次官に御通報方取計ヲ得度

 沖縄県民ノ実情ニ関シテハ県知事ヨリ報告セラルベキモ 県ニハ既ニ通信力ナク 第三十二軍司令部又通信ノ余力ナシト認メラルルニ付キ 本職県知事ノ依頼ヲ受ケタルニ非ザレドモ 現状ヲ看過スルニシノビズ 之ニ代ッテ緊急通知申上グ

 沖縄島ニ敵攻略ヲ開始以来 陸海軍方面 防衛戦闘ニ専念シ県民ニ関シテハ殆ド顧ルニ暇ナカリキ

 然レドモ本職ノ知レル範囲ニ於テハ 県民ハ青壮年ノ全部ヲ防衛召集ニ捧ゲ 残ル老幼婦女子ノミガ相次グ砲爆撃ニ家屋ト財産ノ全部ヲ焼却セラレ 僅カニ身ヲ以テ軍ノ作戦ニ差支ナキ場所ノ小防空壕ニ避難 尚 砲爆撃下■■■風雨ニ曝サレツツ 乏シキ生活ニ甘ンジアリタリ

 而モ若キ婦人ハ率先軍ニ身ヲ捧ゲ 看護婦烹炊婦ハモトヨリ砲弾運ビ 挺身斬込隊スラ申出ルモノアリ

 所詮 敵来リナバ老人子供ハ殺サルベク 婦女子ハ後方ニ運ビ去ラレテ毒牙ニ供セラルベシトテ 親子生別レ 娘ヲ軍衛門ニ捨ツル親アリ

 看護婦ニ至リテハ軍移動ニ際シ 衛生兵既ニ出発シ 身寄リ無キ重傷者ヲ助ケテ■■ 真面目ニシテ一時の感情ニ馳セラレタルモノトハ思ハレズ

 更ニ軍ニ於テ作戦ノ大転換アルヤ 自給自足 夜ノ中ニ遥ニ遠隔地方ノ住民地区ヲ指定セラレ輸送力皆無ノ者 黙々トシテ雨中ヲ移動スルアリ 之ヲ要スルニ陸海軍沖縄ニ進駐以来 終始一貫勤労奉仕 物資節約ヲ強要セラレツ (一部ハ兎角ノ悪評ナキニシモアラザルモ)只管日本人トシテノ御奉公ノ護ヲ胸ニ抱キツツ 遂ニ■■■■与ヘ■コトナクシテ 本戦闘ノ末期ト沖縄島ハ実情形■■■■■■

 一木一草焦土ト化セン 糧食六月一杯ヲ支フルノミナリト謂フ沖縄県民斯ク戦ヘリ

 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ

■ は判読できず

「県民に対し後世特別の御高配を賜らんことを」とは、未だに続く爆音と砲撃の中で苦しむ県民に対するこれが配慮なのか。今こそ全国民が他人事ではなく、ひとり一人が考え、応えなければならないことではないだろうか。(私見)

                                     以上