氏 名
大峯 登
 所 属
東燃和歌山OB会
 掲 載 日
平成20年2月11日
表 題
 熊野古道おもしろ物語(湯の峰温泉
本   文 


2月2日の毎日新聞地方版に掲載の本文を紹介します。

  次回の掲載予定は3月初めです。

 

湯の峰温泉と小栗判官伝説

 湯の峰温泉は今から1800年程前に発見された温泉で、熊野詣での場として、又湯治場として古くから栄えた日本最古の温泉といわれている。温泉街は山深い渓流に沿って並んでおり、湯煙が谷合いに流れ、いかにも山のいで湯といった風情のある温泉である。

 この湯の峰温泉を薬湯として有名にしたのが、小栗判官と照手姫の物語である。親から勘当された判官は、相模の国でそこの豪族に毒を盛られ、顔がくずれ全身麻痺の体となった。判官は土車に乗せられ「この者を熊野の湯に入れてたもれ。ひと引き引いたは千僧供養、ふた引き引いたは万僧供養」と書かれた札を首に掛けられている。この札を見た照手姫や山伏、又沿道の人々はこぞってこの土車を引き、東海道を西へ熊野に向って進んで行く。そして湯の峰の「つぼ湯」に入り、熊野権現の霊験と温泉の薬効によって全快するという物語である。

 この物語は熊野信仰を勧め、参詣の道案内をする「熊野御師(おし)」や「熊野比丘尼」によって、又「一遍上人」ら遊行僧達によって諸国に広まり、更に人形浄瑠璃や歌舞伎によって全国的に知られるようになった。

 湯の峰温泉周辺には小栗判官にまつわる「力石」「蒔かずの稲」「車塚」といった遺跡が保存されている。    

                          紀州語り部 大峯 登

湯の峰温泉 つぼ湯
湯の峰温泉街
小栗判官の力石