氏 名
奥村晴彦
 所 属
東燃総研OB会
 掲 載 日
平成19年 6月01日
表 題
 日産自動車の8年間(聴講要旨
本   文 


 さる21日にゴーン(G)体制で副社長を勤められて来た森山寛氏の話を聴くことができました。氏は東大三鷹寮で私の後輩で、同寮のOB会の席での懇談です。G氏着任以前の問題や、ルノーの支援を仰がねばならなかった事情、G氏の采配ぶりとその成果、これからの課題を整理されました。著書「もっと楽しく」にも書けなかった私見を述べられたので、現役の皆さんの参考にまとめました。

 買収以前の問題は(1)問題を発見しても、根源を追及し、解決することなく先送りする体質、(2)販売台数・シェア優先、(3)走りの高度化の技術のみ重んじ、顧客の好みは後回し、(4)グループ企業への「補助金行政」(儲けた企業は誅求し、赤字企業には資金援助)、(5)有利子負債が過大、であった。それでも買収当時売上高は有数の企業で、営業利益は十分高く、従業員改善提案も過大なほど集まっていた。(5)によるキャッシュフローの行詰りがなければ、上記問題を解決すれば十分立ち直れたはずである。

 その証拠に98年5月に立案した「グローバル事業革新」プランは、遅すぎた着手とはいえ、01年から成果が出始めている。買収は評論家の「400万台クラブに入れなければ自動車企業は生存不可能」との声に押されてホンダ以外各社とも提携合併を模索した当時の風潮によるところが大きい。

 G氏は資本注入とリストラによる負債返済→当期利益の黒字化を「NRP」計画で実現し、次いで「180」計画で有利子負債0を実現した。Gマネージメントは、(1)英語を公用語に(これはよかった)、(2)系列から資本を引揚げ、値引き要求、(3)徹底した資産整理、(4)経営判断基準の厳格な短期化、(5)海外事業の中央集権管理、(6)数値目標管理と成果主義、(7)エリート主導のトップダウンが特色であるが、計画等はcross functional teamで一応若い部下からの提案という形をとらせた。

 建て直し成功の源は、(1)もともと企業が技術とブランドを維持できていた、(2)NRPが分りやすい方針であった、(3)G氏がルノーのために動かず、自分中心、(4)世界の状況が抜群のタイミングであったためといえる。

 今後、(1)教えるものを持たないルノーの支配、(2)短距離経営のG体制の持続、(3)自動車産業に適しているか未知なG経営、(4)利益と「志」の関係、といった課題に直面するであろう。

 古い労使関係のひずみが災いし、問題の(1)(2)(3)(4)に見るトヨタの長らくの姿勢との若干のずれが大きな差になった、といえそうです。今後も問題なしとしない名門同社の行方が気になります。

                                                 以上